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さとうきび物語
余白を生かす引き算のデザイン
The design of the subtraction which employs unfilled space efficiently.
さとうきびの葉や花穂を使って色を染める「ウージ染め」。そのウージ染めの布を用いて作られた3枚のドレス。
2種類のパーティドレスは、軽やかコットンオーガンジーを素材とし、
フレッシュな若草色も美しい絞り柄と、流れるままに色を染める流し染めの雫模様を、それぞれにデザインした。
ウエディングドレスには、さとうきびの花穂で染めたピンクの布をブーケに見立て胸元にあしらった。
布全体を染め上げる総染色を主とするウージ染めに於いては、このような部分染めを生かした引き算のデザインは珍しい。
しかし、かえってそれが余白の美を生み出し、ウージ染めの存在をより鮮やかに浮かび上がらせることに成功している。
さとうきびそのものの素材感と、人の手によって染められる手仕事の余韻を残すため、
絞る、浸すといった、普段の染色工程の中から自然に生まれる色と柄を重視した。
1枚のドレスから、この島の匂いや光りや空気感までもが伝わってくるようで、
そのいずれもが、ゆるやかで、みずみずしく、おだやかで、やさしい。
さとうきび畑を吹き抜ける風を包んでドレスが舞い、
コットンオーガンジーの白が陽射しを享受し、眩しいほどにイノセントな透明感を高めていく。
自然と人へのオマージュから生まれた美しいドレスが、プリミティブな風景の中でより一層存在感を増していった。